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「interpack 2023」を通して、EC・ドイツの容器・包装について考える
Interview

高津社長のサステナ見聞録

#06

「interpack 2023」を通して、EC・ドイツの容器・包装について考える

ECで暮らしていた人が、日本に帰って生活をすると包装ごみの多さに驚くという話をよく耳にします。視察に訪れたドイツで、日本よりも食品提供に紙容器が多く使われているような印象を受けました。でも実際にはどうなんだろう?

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今回のサステナ見聞録では、2023年05月04日 から 2023年05月10日にかけて、ドイツのデュッセルドルフで開催された、世界最大の国際包装機会・資材・製菓機械の総合展示会「interpack 2023 Processing & Packing」を視察して、気になったこと・学んだことをレポートします。

Interpackは世界の包装・加工産業において最も注目される展示会で、これまでも業界の未来展望を提示し、世界のトレンドを牽引してきました。
2023年の展示は、新型コロナの感染拡大によって開催できなかった期間を超えて6年ぶりの開催となり、61カ国から2,807社の展示が集まる盛大なものです。

今回の展示においてサステナビリティは最も重要テーマとして取り上げられ、出展各社は、生産ライン全体の効率性はもちろん、サステナブルな素材、デザイン、成形、印刷、流通など、あらゆる場面で技術やコンセプトを競い合うようにアピールしていました。

興味深い技術はたくさんありましたが、私が今回強い印象を受けたのは、日本よりも、ドイツの消費者のほうが紙容器による様々な食品の提供を日常的に受け入れているように見えることでした。日本においても、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという国の目標のもと、環境負荷の低い紙容器への関心の高さは日々感じているところですが、「そのプラ容器は、紙容器に置き換えられるのに」と思う場面も多くあります。一方、ドイツでは、既にすっかり紙容器の利用が浸透している印象があり、少々羨ましく感じられました。

たとえば、日本では汁が漏れる可能性、輸送中に食品の形状が崩れる可能性などについて、市場から厳しい要求があり、それらひとつひとつの要求に答えるべく、紙よりもプラスチックが選ばれ、様々な形の容器が開発されて来ました。石油化学工業は戦後の日本を支える成長産業のひとつであり、多くの優れた容器を開発してきた歴史があります。日本では今も様々な場面でそうしたプラスチック容器が使われていますが、ドイツでは、少々の不便さを受け入れてもプラスチックではなく、紙容器が選ばれてきているのではないか、そんな印象を持ったのです。

では、実際はどうなのでしょうか。環境先進国とされるドイツで、使い捨て容器や包装材に関する動向について調べてみました。

発表されている資料によると、実は近年ドイツでも他国と同様に、容器・包装材の廃棄量は増加傾向にあります(以下の表を参照)。 素材別の内訳をみると、プラスチックより紙の容器包装材が多く廃棄されていました。しかも、2010年に27.5Kg であった紙の廃棄量が2019年には37.1Kgと9.6Kg増えたのに対して、プラスチックは、9年の間に、1.2Kgしか増えていません。この期間、ドイツでは、容器・包装資材として、プラスチックよりも紙が積極的に選ばれてきたことを伺わせます。

紙の本体容器にあわせて、フタに使うフィルムシールが展示されていた

紙の本体容器にあわせて、フタに使うフィルムシールが展示されていました

寿司の容器も紙とプラスチック蓋の組み合わせ

寿司の容器が紙とプラスチック蓋の組み合わせになっていました

ところで、形状デザインの自由度が高く、軽くて運搬もしやすい、耐水性も高い、その上低コストで大量生産ができる、これほど便利なプラスチックの何が問題とされているのでしょうか。それは主に分解性にあります。耐久性が高く、自然に分解されるには時間のかかるプラスチックごみは長いあいだ環境に残存するため、世界中で増え続ける一方です。近年は海に流れてしまったプラスチックごみ、「海洋プラスチックごみ」が問題になっており、2050年には、プラスチックごみが魚の総重量を上回る、ともいわれています。海洋生物への影響は計り知れません。私たちはまた、飲料水や食物を通して環境中に流れてしまった目に見えない小さな「マイクロプラスチック」を摂取していることも分かってきました。その量は一週間でクレジットカード一枚分にもなると言われ、生態系だけでなく、人体への影響も懸念されています。

2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告書では、2015年の世界のプラスチック総生産量のうち、レジ袋、プラスチック製のスプーン、ストロー、商品のパッケージといった容器包装セクターのプラスチック生産量が最も多く、全体の36パーセントを占めていました(以下の円グラフで赤い部分)。同年10月、EUでは使い捨てプラスチックの流通禁止令が可決され、既に2021年7月からプラスチック製のカトラリーやストローなどの容器の規制がはじまっています。2024年に開催されるパリ五輪は、使い捨てプラスチックを使用しない初の大会となる予定で、公式スポンサーのコカ・コーラ社も、ガラス瓶などで対応することを発表しています

段階的に規制が強化されるドイツの容器包装廃棄物法

さて、環境対応で世界の先を行くドイツですが、これは消費者の意向によるものだけでなく、政策が牽引役となっています。

2018年10月、欧州議会では、2021年からの使い捨てプラスチック製品の販売を欧州連合(EU)内で規制する法案が可決。2019年5月には、使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止し、2021年7月からは使い捨て食器、ストロー、コップ、発砲スチロール製食品容器などの製造・販売を規制対象とする法律が可決しました。

これを受けて、EUに加盟しているドイツでも2019年より新しい容器包装廃棄物法が施行されています。容器・包装材の流通事業者はリサイクル率の向上に向け、政府の包装登録データベースに種類や素材、流通量を登録し、さらにリサイクル業者と契約する義務を負います。2022年1月からは、それまで日本と同じように有料化されていたプラスチック製レジ袋の配布が禁止されました。使い捨て飲料用容器にはデポジットが課されるようになり、容器の返還が促される仕組みが動いています(これにより、容器のリユース率が上がることが期待されます。) 2023年1月からは、食品のテイクアウトをする場合に、客が希望すれば再利用可能な容器に入れることが義務付けられました。今後も、2025年には使い捨てペットボトルに25%以上の再生プラスチックの使用(2030年には30%以上に)義務付けられるなど、段階的に規制を強化し、目標の達成を目指して取り組みが続きます。

包装ごみ問題に対するドイツ人の意識は?

ECで暮らしていた人が、日本に帰って生活をすると包装ごみの多さに驚くという話をよく耳にします。

国民1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量を国別で比較した場合、下のグラフにあるように、日本はアメリカに次いで世界で2番目に多く、年間約32キログラムを排出しています。(黄土色のグラフは廃棄総量、赤色のグラフが国民一人当たりの廃棄量を表しています。)便利で衛生的な日本の消費文化ですが、他国と比較すると、一人ひとりが非常に多くのプラスチックゴミを出していることになり、もっとサステナブルなスタイルに変えていく必要があります。

2018年11月、ドイツを代表する消費者組織連盟がドイツの大手市場調査機関カンター・エムニートに委託した調査によると、国民の96%が包装ごみの削減を重要視している、ということがわかりました。この調査はプラスチックだけを対象にしたものではなく、包装ゴミや、テイクアウトに使われる使い捨て容器についてを調査したものですから、もちろん紙容器も含まれています。私たちは、容器開発・販売者として、プラスチックから紙へという流れの先に、ごみそのものを削減するためにできることを考え、備えていかなければならない、と改めて思いました。

おわりに

INTERPACK2023の公式サイトにはこんなことが書かれています。

気候変動の時代において重要なことは、利用できない廃棄物をできるだけ出さないことです。ここでのキーワードはリサイクルのためのデザインです。たとえば、パッケージのより良い部分をリサイクル可能にして、後でリサイクル材料として再利用できるようにするにはどうすればよいでしょうか? 再利用可能なパッケージは、循環経済のもう1つの側面であり、既に主にレストランやケータリング分野で使用されています。再利用可能なソリューションには他にどのような応用分野があるでしょうか?

1つ明確なことは、包装業界は循環経済に多大な貢献ができるということです。

目指すべき循環型社会において、どんな包装・容器が求められるのか、日本で紙容器を開発する我々にとっても、重要な課題であることを再認識する視察となりました。生分解性の高いプラスチック素材も続々と開発されていますし、紙素材もまた様々な再生素材が開発されてきています。「使い捨て」を最小限に押さえながら、紙容器・包装の良さを活かすのはどんな提案か、引き続き模索して行きたいと思います。

高津社長

高津社長のサステナ見聞録

高津社長

私たち高津紙器では、地球環境問題/脱炭素社会への意識の高まりを背景に「プラスチックよりも紙」に追い風が吹いていることを認識していますが、 一方で手掛ける製品のほぼすべてが使い捨て用途であることから、紙だから「環境に良い」製品開発を行っていると言って良いものか、悩んでもいます。
そこで、この企画では自社の製品開発において改めて環境負荷を減らすためにできることは何か?を探し、環境意識の高いお客様に向けた提案力を高めることを目指して、 社長自らが見て聞いて、感じて学んだことを発信してゆきます。社員・スタッフはもちろんのこと、お取り引きのあるお客様にも広く共有させていただき、 一緒に取り組んでいけることを願っています。

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